昨日に引き続き、今回も金属加工業で体験したお話をします。皆さん金属加工業にはあまり興味がないかもしれませんが、もしこれから金属加工業でお仕事をしようと思っている方のために、気を付けて欲しいことをお話しします。
加工前の素材は意外と適当にカットしてある
クライアントから部品加工の依頼がきたとき、私たちは必要な材料の大きさにピッタリな寸法の材料を注文します。このとき取り代といって、完成した寸法よりも長い寸法で注文するのです。
そうしないと正しい寸法に加工できないからですが、NC旋盤の場合はだいたい上下1ミリずつ、合計2ミリプラスしてカットをお願いするのですが、素材屋はピッタリ2ミリプラスではカットしません。
こういうと語弊があるのですが、だいたい2ミリといった感じでカットするので、長いものも短いものも混ざっていたりします。これも金属加工業ではあるあるかもしれません。
もしも短い場合や加工が失敗した場合のために、2個くらい余分に注文します。長い分には問題ないけど短いと加工ができないので、返品になることもしばしばでした。
NC旋盤で部品加工する流れ
いきなり完成品にするわけではありません。まずは荒取りをします。金属の素材の表面はザラザラで錆が浮いていたりするので、私の場合は荒取りで表面をキレイな状態にしてから加工を始めていました。
実は、加工する製品をつかまえる『爪』は、荒取り用と仕上げ用とで違います。交換しなければならないのですが、まずは荒取りで皮むきをしてから仕上げ用の爪を作るのです。
そうしないとガタガタの製品になってしまうからですね。なので、まずはちょうどいい爪を付けて、片側だけ皮むきをして仕上げ用の爪を作ります。そして荒取りをした方を付けて初めて加工に入るわけです。
荒取りが終わってしまったら、次は裏側を加工しなければなりません。そのためにはまた段取りをします。さらに爪を削って製品にピッタリの状態にして、いよいよ裏側の加工に入るわけです。
機械によっては荒取りと仕上げを別にしなければならないものもあります。
NC旋盤のタイプによって工程の数が変わる
NC旋盤には櫛歯型とタレット型があります。最近はMCとセットになった複合機もありますが、私が使用していたのは櫛歯型だったので、台に取り付けられる刃物の数に制限があったので、荒取りと仕上げは分けていました。
もちろん部品のサイズによっては荒取りと仕上げを同時にできるケースもありましたけど……。タレット型は回転するツールを取り付ける装置が付いていて、そこに取り付けられるだけ工具を取り付けて加工するので、仕上げまでできるケースが多かったです。
複合機になるともっと取り付けられるツールの数が増えるので、フライス加工も部品の横に加工を施すことも可能です。しかし導入するにはかなり高額な費用がかかるので、中小企業にはあまりないかもしれません。
加工の前に必ず行わなければならない寸法チェック
一番最初に話したように、材料の寸法は必ず測って欲しいです。ていうか、必ず測るのが当然なのですが、慣れてくると見た目で「大丈夫だな」なんて判断してしまうこともあるのです。これはあるあるであって欲しくはないですが……。
なぜなのか?それは最初の一発ですごく怖い思いをするからです。経験したことある方は少ないのかもしれませんが、私は一度だけその恐怖を味わったことがあります。
それは、径80×全長150mmの鉄の丸材の加工を行ったときでした(NCはほぼ丸しか加工しません)。まだ私が初心者だったため、先輩が段取りをしてくれて、私は材料を取り付けてスタートボタンを押す作業をしていました。
初心者だった私は、明らかにおかしいなとは思ったので、「これ大丈夫ですか?」と聞いたところ、先輩は「大丈夫だよ、加工して」というので取り付けてボタンを押しました。
すると、突然「ガコーーーン」と大きな音がして、ガガガガガガガ!と恐ろしい音がしたのです。
もう少しでNCが壊れるところだった
そのときは突然大きな音がして、鉄の塊が機械の内部で飛び回っていたので(高速回転しているから)、恐怖でビビッていました。そして飛んでいった材料を見たところ、7ミリくらい深く刃物のあとがあって、負荷がかかって吹き飛んだようでした。
先輩は私に「お前がくわぎかた(取り付け方)が浅かったんだ!」と言われましたが、そんなはずはない!と抗議して、ノギス(長さを測るツール)で材料を測ると、2mmじゃなくて1cmも長かったというお粗末なお話でした。
私も若かったし最初に「長くね?」と聞いたのに、「自分が測ったから確かだ!」と言われたので、それ以上は追求しなかったのです。加工する前に自分でもチェックすれば良かったのに、とそのときは反省したものでした。
結局長いものもあるので、手前から切削に入るようにプログラミングをして、事なきを得ましたが、数が多いときや忙しいときは、つい測るのを省くときもあるのです。
でもその経験があってからは、手前から切削するようにプログラミングをする、もしくは時間がかかっても1個ずつ必ず測って分けてから加工を始めるようになりました。数が多いと面倒に感じますが、段取りを再びするよりは短時間で済みますよね。
どんなに忙しくても必ず素材の長さは測りましょう
実際にあった体験談でした。あの音は本当に怖かったです。NC旋盤にはカバーがあるので加工中に飛んでも一応は危険はないのですが、大きなものだと突き抜ける可能性があるので、手間はかかるけど安全のためにも測定した方がいいのですね。
こんな失敗を繰り返して段々と技術も経験も増えていくので、ぜひ金属加工業で仕事をしようと思っている方は、気を付けて欲しいです。